ハードボイルド２１世紀 千年王国の悩み

このころ統合失調状態がさらに加速化していた。ＴＶの中にいる人間が
こちらを見ているかのような、死の淵を歩くような緊迫感。
地平線の向こうが、もし崖だったら？

もはや自分自身でどうにもできないような宿題が目の前にあるのはわかっていた。
死の淵を恐れて、そこから逃れる命、それこそが生きることだと。

”これは夢だ、ぼくはここにいない”

カラスが一羽とんできてカァカァと宿題を突きつける。
人と会うのが怖いので、この状況から脱出するため、練習として深夜に外にでる
ところからはじめていった。
世の中は２ちゃんねるやＴＶの世界でしか知らないような
謎の感覚だった。

この世界はもうなくなっていて、ここにいるにんげんは全員ロボットなんじゃないか
この世界は全てウソでこいつらは操られているのではないだろうか
深夜2時に　交差点で悪魔のような犬とであった。
目に見えないのに、音だけが近づいてくる。
恐怖、死、ＡＷＥ、
まるでピストルの銃口がこっちを狙っているかのようだ。
完全に現実世界と乖離しはじめていた。
脳内で認識している現実と世間の現実がまったく一致せず整合性もなくなっている。

なんて残酷な世界なんだろう
なぜこんな世界にいるのだ。

もし地平線の向こうになにもなかったらどすうる？

ある日ＮＨＫのＢＳを見ていたら、南極大陸のオットセイの生態を映像にした番組が
あった。

このオットセイたちも例外なく死ぬし
みんないなくなるんだ・・・・

交尾をはじめるオットセイ、そのオットセイを観測するカメラクルー
なんて無様なんだろう。

自分も同じなのか。
人間も例外なく、無様ないきもので、簡単なことで死んだりする。

絶望を受け入れたとき、光がまた見えたのだった。

人間が作った万物の意味は、人間を主体とし、その物体そのものに意味はもともとない。
人間は思ったよりも優れていないし、無様な生き物
しかしそれが本当のこと。
生きることは恥さらしでもない、諸行無常でしかない。

すべての意味はなくなり、全てが幻になった。
そうか、自分以外は全部夢なんだ。

ぼくはここにいない、これは夢だ。
トンネルの向こうにある光。