ただ生きている、それだけで美しい
西暦20XX年。東京は初夏の白く照らされた輝くコンクリートの街のみ。そこに無人の証明写真、自動販売機、無尽のコインパーキング、フェンスの前に置かれている。どう見ても、ここで暮らしたくはない。ゼッタイ楽しくない。春に東京や、大阪の大都市(?)にきちゃってみたものの夏がきてあつい!死ぬ!H&Mとかいってみても汗かくだけで友達いないし、大学おもんないし、FBとかLINEとかしないといけないしさ、自分の実存すら危うくなりそうな情報の中、陽炎のように揺らめく夢と、理想と現実と30.転がる石のようになれるのかな。
そんな無機質な場所で、女の子が、愛おしそうに「baby,baby,baby....」とこちらを見て歌っている。誰かを待っているのか、それとも子犬がじゃれあうかのように、今この瞬間21世紀のこの彼岸を、キミと生きている、でもいつかロボットになってしまう。悲しいね~、楽しいね!ビューティフォー、ワンダフォーに踊れ!ビートにシンクしてハイな魔法を手に入れろ!
この箇所はこのMVで一番、グっときてガッとくる。ロックの名曲の、せつなさと空虚さ、そして現存在を生きている尊い想い一瞬にして過去になる、気持ち。それを表現されちゃった。
やられた。子犬が鳴くように、
しかしうだるような夏の暑さだ。心の中はまったくはれてないのに、空は青空で
急に土砂降りの雨が降る。
女優の長澤まさみが「すべてにおいて自信がない」とモテキ映画本で語っていた。生まれた頃には、すべてがそろっていて、自分の必要性も感じられない。だけど2000年、21世紀になったいま、生きていることがこんなに素晴らしいのかきみと、ぼく、ただそれだけでいいんだ。
この世界が本当は存在しなくて、いつか世界が終わりがきても今生きている、この気持ちは真実だと教えてくれるから。